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岡山地方裁判所 平成4年(ワ)189号 判決

原告

藤原保夫

被告

吉岡桂子

主文

被告は、原告に対し、金一二五六万七五四六円及び内金一一五六万七五四六円に対する平成元年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを九分し、その七を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

被告は、原告に対し、金一六五二万八一七一円及び内金一五五二万八一七一円に対する平成元年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行宣言

二  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  交通事故

日時 平成元年二月二五日午後一〇時二五分頃

場所 岡山市奥田二丁目八番一一号先市道交差点上

加害車両 被告運転の普通貨物自動車(岡山四〇ね三一〇六)

被害車両 原告運転の普通乗用自動車(岡五五い一三七〇)

態様 衝突

2  責任原因

被告は、現場において、加害車両を一旦停止する義務を負つていたのに、これを怠り、漫然と進行させた過失により、本件事故を発生させたから、原告に対して自賠法三条又は民法七〇九条に基づいて損害賠償責任を負う。

3  権利侵害

原告は、本件事故により、頸椎捻挫、腰椎捻挫、両肘打撲の傷害を負い、外傷性頸部症候群、両耳鳴り、両感音性難聴、外傷後神経症等の症状が出現し、次のとおり入通院治療を余儀なくされたが、左耳鳴り、難聴、第四、第五腰椎骨棘形成、頭重感、首筋痛等の後遺障害が残り、その程度は自賠責後遺障害等級一二級の局部に頑固な神経症状を残すものに該当する。

〈1〉 平成元年二月二六日通院 河合外科

〈2〉 平成元年二月二七日から四月二二日まで入院 伊藤整形外科

〈3〉 平成元年四月二三日から五月三一日まで通院 伊藤整形外科

〈4〉 平成元年三月一一日から同月一六日まで通院 川崎医科大学附属川崎病院

〈5〉 平成元年三月二〇日から同月二七日まで通院 総合病院岡山協立病院

〈6〉 平成元年三月三一日から同年六月一日まで通院 岡山大学医学部附属病院

〈7〉 平成元年六月二日から同月七日まで入院 岡山大学医学部附属病院

〈8〉 平成元年四月二五日から同年五月八日まで通院 あだち整骨院

〈9〉 平成元年四月二六日通院 中島神経内科医院

〈10〉 平成元年五月九日通院 財団法人操風会岡山旭東病院

〈11〉 平成元年五月一〇日通院 井戸外科医院

〈12〉 平成元年六月七日から同年七月五日まで入院 岡山労災病院耳鼻咽喉科

〈13〉 平成元年九月五日から同年一二月二五日まで入院

(平成元年一一月二一日開頭による左聴神経減圧術施行)岡山労災病院脳神経外科

〈14〉 平成元年七月六日から同年九月四日まで、同年一二月二六日から平成三年三月二八日まで通院 岡山労災病院耳鼻咽喉科 脳神経外科

〈15〉 平成二年九月二八日から平成三年四月二六日まで通院黒住整形外科医院

4  損害額

〈1〉 入院諸雑費 二八万一四〇〇円

原告の伊藤整形外科(五四日)、岡山大学医学部附属病院(六日)、岡山労災病院(一四一日)の合計二〇一日の入院期間中の入院諸雑費は、一日当り一四〇〇円として、合計二八万一四〇〇円となる。

〈2〉 交通費 九万八五二〇円

〈3〉 川西はり院治療費 三九〇〇円

〈4〉 福田整骨院治療費 一万〇六〇〇円

〈5〉 伊藤整形外科診断書料 四五〇〇円

〈6〉 眼鏡代 六万六四三五円

〈7〉 腰椎装具費 一万九五四五円

〈8〉 帽子代(手術後着帽用) 二〇六〇円

〈9〉 休業損害 六一一万一五九五円

〈10〉 後遺障害逸失利益 五一二万九六一六円

原告の後遺障害による逸失利益は、平均月収四一万九五一九円に年間月数一二を乗じ、労働能力喪失割合として後遺障害等級一二級に見合う〇・一四を乗じ、労働能力喪失期間九年に対応する新ホフマン係数七・二七八二を乗じた五一二万九六一六円となる。

〈11〉 入通院慰謝料 四〇〇万円

〈12〉 後遺障害慰謝料 三〇〇万円

〈13〉 合計 一八七二万八一七一円

5  損害の填補 三二〇万円

6  弁護士費用 一〇〇万円

7  結論

よつて、原告は、被告に対し、損害額合計から填補額を控除して弁護士費用を加算した一六五二万八一七一円及び弁護士費用を除く一五五二万八一七一円に対する本件事故の日である平成元年二月二五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1、2は認める。

請求原因3のうち、原告の入通院治療の状況については認めるが、その余は争う。原告の症状はかなり多種多様な様相を呈しており、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の私病や既往症があり、自律神経失調症的な傾向もあり、これらが治療を長期化させているから、原告の症状には、相当程度原告の負担帰すべき心因性の寄与分がある。

請求原因4は争う。

請求原因5は認める。

請求原因6は争う。

三  抗弁

1  過失相殺

原告は、本件事故現場交差点において、前方の安全を十分確かめることなく、また徐行することもなく漫然と走行した過失により、本件事故を惹起したものであり、原告にも二〇パーセントの過失があり、過失相殺すべきである。

2  損害の填補

被告は、請求原因5の三二〇万円の損害の填補の外、原告の治療費五八二万一二三三円を負担した。

四  抗弁に対する認否

抗弁1は争う。

抗弁2は認めるが、治療費は請求外である。

第三証拠

本件記録中の証拠に関する目録のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  交通事故

請求原因1は当事者間に争いがない。

二  責任原因

請求原因2は当事者間に争いがない。

三  権利侵害

請求原因3のうち、原告の入通院治療の状況については、当事者間に争いがない。

右争いのない事実に加えて、甲第二二ないし第二七号証、乙第二ないし第四九号証、原告本人尋問の結果、調査嘱託の結果二件並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

原告は、タクシー運転手として被害車両を運転し、乗客を乗せて進行中、本件事故に遭遇したものであるが、原告運転の被害車両は、その左側後部に交差道路左方向から飛び出してきた被告運転の加害車両に衝突され、その前部を左に振られるような形になつて左前方の電柱に衝突して停止し、原告は頭部を強打して数分間程意識喪失の状態となつた。

しばらくして我にかえつた原告は、乗客が怪我をしていたことから被告に依頼して救急車を呼び、まもなく到着した警察による実況見分に立会うなどしていたが、頭痛や腰痛を覚えて苦しくなり、現場に駆けつけた勤務会社の事故係に後を任せて途中で帰宅した。

ところが、帰宅後も原告には頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、腰痛等や軽度の意識障害もあり、翌朝である平成元年二月二六日河合外科で受診し、同月二七日伊藤整形外科に転医し、同月二八日から同外科に入院し、数日して意識障害が落着いた頃から両耳鳴りを自覚するようになるなどした。

その後、原告は、外傷性頸部症候群、両耳鳴り、両感音性難聴、外傷後神経症等の症状について、請求原因3のとおり入通院して治療を受け、特に耳鳴りに関しては開頭手術まで受けたが、軽度の左耳鳴り、難聴、第四、第五腰椎骨棘形成、頭重感、首筋痛等の症状が残り、平成二年八月六日岡山労災病院で症状固定の診断を受け、自賠責後遺障害等級の事前認定を受けたところ、当初自賠責後遺障害の適用には達しないとして非該当とされた後、異議申立後、原告には神経学的な他覚所見は認められないものの、自覚症状としての外傷性頸部症候群による左耳鳴り、難聴が同等級一四級に該当するものとされた。

原告は、本件事故以前は通常の健康体で、特段の持病もなく、タクシー運転手としての勤務に何等差支えはなかつたものであるが、本件事故による傷害の治療のため長期間の入通院の後、平成二年二月頃、一応職場に復帰したものの、従前のとおり働くことができず、現在では、左耳に虫が入つているような静かな場所では気になる程度の小さい耳鳴りが常時継続し、幾分左耳が聞えにくい感じで、疲労時や悪天候時に頭重感、首筋の痛みや肩凝り等があり、従前タクシー運転手として昼夜通常に勤務できていたのに、肩凝り、目の疲れ、腰痛等が出やすく、夜間の勤務に耐えられない状態となつており、事故当時の勤務先タクシー会社を退職して、別会社で夜間勤務のないアルバイトの運転手として稼働している。

以上のとおり認められる。

なお、被告は、請求原因3に対する認否のとおり、原告の症状がかなり多種多様な様相を呈し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の私病や既往症があり、自律神経失調症的な傾向もあり、これらが治療を長期化させているから、原告の症状には、相当程度原告の負担に帰すべき心因性の寄与分がある旨主張し、乙第四七号証によれば、原告は、医療機関による平成二年一一月の胃部精密検査において、胃潰瘍、十二指腸潰瘍瘢痕の存在並びに要内科的治療を指摘されたことは認められるが、右は原告の本件事故による症状固定後のものであるほか、前記認定に供した各証拠によれば、原告は右事故による長期間の治療、今後の健康や就職の将来についての不安等から精神的苦悩を抱えていたことが認められるところ、これが右胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となつたとも考えられ、そうだとすれば、右胃潰瘍等も本件事故に起因するものともいい得る次第であつて、右胃潰瘍等の存在を理由に、原告の本件事故後の治療や症状について、原告の負担に帰すべき心因性の寄与部分があるとは到底いい難いところであり、他にこれを首肯させるような事実を認めるに足りる証拠もない。

四  損害額

1  入院諸雑費 二四万一二〇〇円

前記三認定事実によれば、原告は、伊藤整形外科(五四日)、岡山大学医学部附属病院(六日)及び岡山労災病院(一四一日)に入院し、その合計は二〇一日を下らないところ、一日当りの入院雑費は一二〇〇円程度と認めるのが相当であるから、二〇一日間の合計額は、二四万一二〇〇円と認められる。

2  交通費 六万円

原告は、交通費として請求原因4〈2〉のとおり九万八五二〇円を主張し、甲第一〇号証の一ないし八五を提出し、右はいずれもタクシー乗車の領収証と目されるが、乗車時期、区間や乗車料金(五五〇円から六三九〇円まで)から見て、本件との関連性や必要性に一部疑問があり、そのまま直ちには採用し難い。

もつとも、乙第三ないし第四四号証並びに弁論の全趣旨によれば、原告の通院実日数は六〇日を下らない(証拠上正確な通院実日数は明らかではない)ことが認められ、通院した医療機関が多岐にわたつていることからすると、通院費用としては一日当り一〇〇〇円程度、全体で六万円程度と認めるのが相当である。

3  川西はり院治療費

甲第一一、第一二号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成二年八月二〇日頃川西はり院で頭肩痛に対するはり治療を受け、代金三九〇〇円を支払つたことが認められるが、右はいわゆる症状固定後の治療であり、本来後遺障害に対する慰謝料の中に含まれるべき性質のものであるところ、後記12認定のように、原告については後遺障害による慰謝料を認めているので、独自の損害項目としては認められない。

4  福田整骨院治療費

甲第一一号証、第一三ないし第一五号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成二年八月下旬から九月にかけて福田整骨院ではり、灸の治療を受け、代金合計一万〇六〇〇円を支払つたことが認められるが、右はいわゆる症状固定後の治療であり、前項と同様の理由で、独自の損害項目としては認められない。

5  伊藤整形外科診断書料 四五〇〇円

甲第一六ないし第一八号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因4〈5〉の事実が認められる。

6  眼鏡代 六万六四三五円

甲第一九、第二三号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因4〈6〉の事実が認められる。

7  腰椎装具費 一万九五四五円

甲第二〇号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因4〈7〉の事実が認められる。

8  帽子代(手術後着用帽) 二〇六〇円

甲第二一号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因4〈8〉の事実が認められる。

9  休業損害 五六二万九九三三円

前記三認定の原告の症状、治療の経過、後遺障害の内容等に加えて、甲第三ないし第九号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和六年七月四日生の男性(五七歳)で、本件事故当時中国交通株式会社に勤務するタクシー運転手であり、事故前三カ月間に受領した給与額は合計一二五万八五五九円であつたこと、原告は、事故後、入通院のため仕事に従事することができず、平成二年一月頃まで休業を余儀なくされ、同年二月頃勤務に出るようになつたが、従前のとおり働くことができず、一部休業を余儀なくされ、事故の翌月である平成元年三月から症状固定の診断の前月に当る平成二年七月までに支給を受けた給与額は合計二一五万〇三九八円にとどまつたこと、また、平成元年五月、一一月、平成二年五月、一一月に支給される賞与については、原告の事故後の休業により減額され、事故による休業がなければ支給される筈の金額よりも合計で六四万八五〇八円少なかつたこと、以上のとおり認められる。

右認定事実によれば、原告の休業による損害は、事故前三カ月間に受領した給与額合計一二五万八五五九円の三分の一である平均月収四一万九五一九円に、全部又は一部休業を余儀なくされた平成元年三月から症状固定の診断の前月に当る平成二年七月まで月数一七を乗じた七一三万一八二三円から、右期間に支給を受けた給与額合計二一五万〇三九八円を控除し、右休業により減額された賞与額合計六四万八五〇八円を加算して得た五六二万九九三三円を下回ることはないものというべきである。

10  後遺障害逸失利益 四六四万三八七三円

甲第二九ないし第三三号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故による後遺障害のため通常勤務に復帰することができず、中国交通株式会社を退職することを余儀なくされ、東和タクシー株式会社で昼間だけ勤務のあるバイト運転手として平成四年一〇月頃まで勤務したが、毎月九万四〇〇〇円程度の給与を得るだけの稼働しかできないでいることが認められ、右認定事実に加えて、前記三、四認定の原告の後遺障害の内容程度、年齢、職種、その後の転職や勤務支障の状況等を総合考慮すると、原告は、本件事故の後遺障害により少なくともその主張にかかる一四パーセント程度の労働能力を喪失し、その期間は症状固定時(五九歳)から八年間にわたるものと認めるのが相当である。

従つて、原告の後遺障害逸失利益は、前記9認定の平均月収四一万九五一九円に年間月数一二を乗じ、労働能力喪失割合として〇・一四を乗じ、労働能力喪失期間八年に対応する新ホフマン係数六・五八九を乗じて得た四六四万三八七三円と認めるのが相当である。

11  入通院慰謝料 二二〇万円

前記三認定の原告の入通院期間、手術の内容や治療の経過等を総合考慮すると、入通院慰謝料は二二〇万円と認めるのが相当である。

12  後遺障害慰謝料 一九〇万円

前記三認定の後遺障害の内容程度、前記四10認定の減収の状況等に照らすと、後遺障害慰謝料は一九〇万円と認めるのが相当である。

13  合計 一四七六万七五四六円

五  過失相殺

甲第一、第二二、第二三号証、乙第一、第二号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、住宅街の中を南北に通ずる幅員約六メートルの道路(以下「南北道路」という)と東西に通ずるほぼ同幅員の道路(以下「東西道路」という)が交差する信号機のない交差点であるが、住宅の塀等のため交差する道路相互の見通しはできない状況にあり、東西道路上の交差点手前には一時停止線が設けられていた。

原告は、被害車両に乗客を乗せてタクシー乗務中であり、南北道路を北進して時速約二〇キロメートル程度で本件事故現場交差点にさしかかり、その直前で交差する東西道路の左(西)方向から被告運転の加害車両が進行してくるのに気がついたが、停止するものと思い、自車をそれ以上減速することなく先に交差点に進入させたところ、加害車両が停止せずに交差点内に進入してきたため、被害車両の左側後部に加害車両の前部が衝突し、その衝撃で被害車両は左後部を右に振られて左前方に進行し、交差点北西角付近にある電柱に衝突して停止した。

被告は、加害車両を運転し、東西道路を東進して本件事故現場交差点にさしかかつたが、手前に一時停止線があるにもかかわらず、停止せず南北道路の進路の安全を確認することなく交差点に進入しようとしたところ、南北道路を北進してきた被害車両が交差点に先に進入してきたのを発見して驚き、慌てて停止しようとしたが止りきれず、自車前部を被害車両の左側後部に衝突させ、さらに同車を交差点北西角付近の電柱に衝突させた。

以上のとおり認められる。

右認定事実によれば、本件事故は、専ら被告の一時停止義務違反、交差道路に対する安全確認義務違反に帰せられるべきものというべきであるところ、他方、原告の側にも被告運転の加害車両が当然一時停止するものと思い込み、そのまま進行してしまつた点に落度がないとはいえないが、原告運転の被害車両が先に交差点に進入している事情に加え、衝突後被害車両の後部が右に振られていることに鑑みると、被害車両はかなりの速度で進行してきたものというほかなく、これにより衝突の衝撃が強大化され、原告の傷害の程度を大きくし、その長期にわたる入通院及び後遺障害を来たしたものと推認できる事情をも合わせ考慮すると、原告の落度はごく僅かなものであり、これを理由に過失相殺するまでのことはないものというべきである。

従つて、抗弁1は理由がない。

六  損害の填補 三二〇万円

抗弁2のうち、被告が原告の請求する損害のうち三二〇万円を填補したことは当事者間に争いがない。なお、被告が原告の治療費五八二万一二三三円を負担したことも当事者間に争いがないが、右治療費は請求外であることが記録上明らかである。

七  弁護士費用 一〇〇万円

本件事案の性質、審理の経過、認定損害額等を総合考慮すると、弁護士費用としては一〇〇万円と認めるので相当である。

八  結論

以上によれば、原告の請求は、被告に対し、損害額合計一四七六万七五四六円から填補額三二〇万円を控除し、弁護士費用一〇〇万円を加算して得た一二五六万七五四六円及び弁護士費用を控除した内金一一五六万七五四六円に対する本件事故の日である平成元年二月二五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢延正平)

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